『死化粧』小林光恵(050622)
小林光恵さんの最新刊。『ケアとしての死化粧』をまとめられた後の,一般の方向けの読み物。7本の小説と解説記事(これが白土三平の漫画『サスケ』のよう)で構成。
■『死化粧』(小林光恵/宝島社/本体1,500円)
ストーリー・テラーとしての小林光恵さんのスタイルは,もう確立されており,この本に書かれた7本の物語のどれもがココロに染みます。家族や友人同士の会話,空気の描写がお上手ですっかり物語に入り込んでしまい,涙が出ることもしばしば。小林さんの文章には,時間が止まるというか,独特の“間”があり,オヤジもやさしい気持ちになります。無言のお芝居・役者のつくる空気を,文章で見せるというのでしょうか。“小林光恵メガネ”をかけると世界はこんな風に見えるんだな〜という感じです。小説の中での視線の持っていき方,感じ方・考え方のベースに,いわば“看護マインド”があり,看護の世界にいらっしゃる方ならではの“観察眼”“知見”が新鮮。そんなことを感じつつ,今,生きて“ある”自分や周囲の人たちがいとおしくなってしまうのでございます。
一見したところでは,前書きや解説記事は,“いらないんじゃないかな〜”という感じがしましたが,こういう「教科書」もアリなのかもしれないと思って読んでみると,まるで自動車免許の更新のときのような気分になりました。スライドを見た後に講師が講義するというアレです(優良ドライバーは見せられないのでしたっけ? 今は? 私はコロっと駐車違反等で捕まってしまうので,優良ドライバーになったことがなく,わかりませんが)。サスケの解説もそれはそれでオモシロかったし…。
第1話 「縛らないで!」では,亡くなった方の顎を縛る習慣について取り上げられています。先日亡くなったウチの伯父貴は縛られてました。胸が痛んだ。父がきれいな顔だっただけにね。そんなことを思い出しました。第4話では,エンバーミング(死後の処置。血液と交換に衛生保全液を注入するなど)という処置が出てきて勉強になりました。第5話は認知症の方の話と特別養護老人ホームに関する話,第6話は病気によるにおいにまつわる話,第7話はオヤジと息子の話。入院中に患者が精神的な負担から一時的に異常な行動をする…なんて,実にリアルでございました。私が入院していたときも,夜中にそういうシーンは何度かありましたし。
個々の小説は深く入り込んで読めますし,それが効いて一般の方向けの「教科書」としても有用なツクリになっていると思います。ネタがネタだけに,病気を持っていらっしゃる方やそのご家族,高齢の方にはツライ部分が多いでしょうが,精神的に大丈夫そうなら是非読んでいただきたい本です。私は子どもたちにも読ませるつもりです。この小説群では,親子,兄弟,夫婦,祖父祖母と孫,義母と嫁など,いろいろな形の家族が登場します。誰かの死を前にして,私たちはそこに集まっている人たちのことを改めて考えるものですよね。そして,死と生は遠くないことも…。我が家の子どもたちにもそんなことを考えてもらいたい。
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リンク: 元C型肝炎患者のホームページ
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