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2006年6月16日 (金)

『正義と嫉妬の経済学』竹内靖雄(060616)

 1992年9月初版の古い本ですが,竹内靖雄先生の書かれたものは面白い。オススメです。

■『正義と嫉妬の経済学』(竹内靖雄/講談社/本体1,800円)


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 特に「第15章 地球環境と人口の経済倫理学」は印象的でした。環境問題を解決するために「誰の金を誰のために使うのか」と考えた箇所では,「人の金を他人のために」使う場合,非節約と非効率になりがちだという当たり前のことを指摘してくれています。政府に環境問題への対応を任せたらそうなるでしょといった話なのですが,こうした考え方が次々と展開されて,結局,環境問題も「倫理問題のように見える部分(われわれは,未来の世代が生存可能な地球環境を残さねばならないと過大に考えることなど)を排除して『普通の問題』に還元することが重要である。」とされています。ここでいう「普通の問題」というのは,「問題の性質をできるだけ正確に認識した上で,技術的,政治的,経済的に実行可能な手段を見つけようというもの」です(329〜330ページ)。苦〜い味のする文章であります。

 またどこかで竹内先生の本と巡り会いたい。勉強になります。


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2006年6月10日 (土)

『仕事人の時代』太田肇(060610)

 このところ,『経済学の正しい使用法』『経済学で読み解く日本の政治』『市場経済学の源流』と,経済学に関する本を読んできて,頭でっかちになった気がしたので,ハートに来る太田肇先生のご著書を手に取りました。

■『仕事人の時代』(太田肇/新潮社/本体1,400円)

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 太田肇先生は,1954年生まれ。私より4歳年上。私は先生のご著書は『個人尊重の組織論』(中公新書)を拝読しただけですが,新聞や雑誌等に書かれたものを目にすると「この人はわかってるなあ〜」といつも思います。

 で,胃の病気で私の会社のエライ人(労働法を労働者を管理する法律だと理解して,もろもろの規定を法定の最低限度に合わせることに心血を注いで来た人)が入院したとき,『個人尊重の組織論』をお送りしたのでした。退院したときの彼の感想が面白かった。「君が社長になったらやんなよ」ですって。「おっさんの頭と心の病(やまい)は死んでも治らないんだろうなあ」と思ったことでした。会社人間の彼には,太田先生の世界はまったく理解できないし,また,太田先生のお考えを認めることは,自己否定になってしまうのでしょう。可哀想な人であります。

 太田先生の主張は明瞭。組織人でなく仕事人(しごとじん)になろうということです。

 「仕事人」とは,自分の専門とする仕事とそれを遂行する能力をもち,それを拠り所に自らの人生を歩んでいく人間である。(9ページ)

 この本は,我が家の子どもたち全員に読ませるつもりです。とりあえず就職が決まった長女から。


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2006年6月 8日 (木)

『市場経済学の源流』井上義朗(060608)

 井堀利宏先生の『経済学で読み解く日本の政治』(2006.6.3)を面白く拝読したので,経済学的雰囲気にもうちょっと浸ってみようと,この本を読みました。

■『市場経済学の源流』(井上義朗/中公新書/本体660円)

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 井上義朗先生は1962年生まれ。この本は1993年3月初版。私の手元にあるのは同年4月の再版。この本が出た当時の井上先生の肩書は千葉大学法経学部専任講師(現在は中央大学商学部教授のようです)。30歳になったばかりで新書を書かれ,しかもわずかな期間でそれが再販になっているんですねえ。何だかすごいです。

 さて。この本の副題は「マーシャル,ケインズ,ヒックス」です。マーシャル,ケインズはよく耳にしますが,ヒックスについては,マーシャルやケインズほど,知られていないように思います。「市場経済学」といわれると,例の需要曲線と供給曲線を使った分析があって,それだとうまく行かないことがあるので,ケインズが「有効需要」といった概念を導入して市場を刺激することを提案した,なんてことを思います。で,不勉強で情けないですが,ヒックスは,いろいろなところで名前が出てくるけれども,何がすごいのか私にはわからないでおります。で,この本を読むとわかるかな? と思っていたのですが,井上先生には申し訳ないのですが,よくわかりませんでした。わかったことは,

「ヒックスという人はきわめて多くの顔を持った人物である。経済学にはいろいろな専攻分野があるが,ヒックスはおよそそのすべてに一回は顔を出している。しかも,そのほとんどにおいて,後のスタンダードとなるような業績を残している」(145ページ)

 ということで,私などが,「こういう人」といえるような人ではないのだなということ。

 いや〜経済学説史は,当たり前ですが経済理論をちゃんとわかっていないと難しいわ。井上義朗先生の経済動学に寄せる期待の大きさはわかりましたが…。


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2006年6月 6日 (火)

『ハリー・ポッターと謎のプリンス』(上・下)J.K.ローリング/松岡佑子訳(060604)

 たまたま『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』をずっと読まないでいたおかげで,前作を1か月前に読んで(2006.5.4)間もないうちに,この作品を読むことができました。

■『ハリー・ポッターと謎のプリンス』(上・下)(J.K.ローリング/松岡佑子訳/静山社/本体〈上下巻セット〉:3,800円)

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 今回は「暗い話」と,長女から言われておりましたが,私はそれほどそのようなことは感じず,普通に,(気持ちが悪くなることのない)ジェット・コースターの動きに乗ってラストに至りました。最後の「サビ」に行き着くまでの過程が素晴らしく,読み終わった後は,「はあ〜。次が読みたい」という感じ。オススメです。ビルの彼女がいいですねえ。映画ではどんな女優さんが演ずるのでしょうか?

 それにしても,内容は面白く,造本もしっかりしていて,私は好きなのですが,この本は“重い”。持ち歩いて電車の中などで読もうとするとちょっと辛いでしょうねえ。これは仕方のないことでしょうが…。そんなことを思っていたら,電子ブックか何かで軽くしかもカラーの新たなデザインで読むといったアイデアを思いつきました。それはそれで,かなり売れそうです。上左の本の帯によると,世界で3億部(世界の人口は約65億人),日本で2,100万部(日本の人口〈外国籍の人を含む常住人口〉は約1億2,800万人,日本人人口は約1億2,600万人/2006.1.1確定値)のベストセラー。日本人の6人に1人が読めるという部数です。我が家では5人家族中,部活で忙しい二女を除く4人が読了。家族4人で各2日ぐらい楽しんで,平均単価1,000円弱というのは“おトク”な感じ。


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2006年6月 3日 (土)

『経済学で読み解く日本の政治』井堀利宏(060603)

 井堀利宏先生は,マクロ経済学,公共経済学,財政学がご専門の東京大学教授。1952年生まれ。いま,最も“旬”な学者さんのお一人だと思います。この本は1999年5月に第1刷,私の手元にあるのは,1999年8月の第2刷です。

■『経済学で読み解く日本の政治』(井堀利宏/東洋経済/本体:1,600円)

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 『経済学の正しい使用法』(2006.5.23)と同じように読めそうということで,読んでみました。これ,井堀先生は一般の人向けに易しく書かれたおつもりでしょうが,結構難しかったです。おそらく正確な表現をしようとするあまり経済学用語がたくさん出てくるのが,私のようなものには「取っつきにくい」原因と思われます。とはいえ理解できるところについては,面白かったです。オススメです。こんな話が出てきます(35〜37ページ/ちょっと図の記号は変えてあります)。

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 ある政策たとえば政府支出について,A〜Eの5人がそれぞれa〜eの提案(a<b<c<d<e)を持っているとして,a〜eのうち1つの政策を採用しなくてはならないとき,多数決ではどの政策が採用されるかという話。Aのaという提案に賛成するのはAだけ。Bのbという提案に賛成するのはAとB(Aにとっては,c以上の政策よりはbのほうが,より自分の提案に近いのでbに賛成する)。逆にeからdと見てきても同様で,結局cが採用されるというもの。面白いですねえ。

 さらに面白いのは,たとえば,A〜Cだけで考えて,aの政策を支持するグループが100人,bの政策を支持する人が1人,cの政策を支持するグループが100人いた場合,同様に考えると,Aにとってはcよりbがマシであり,Cにとってはaよりbのほうがマシなので,bが選択されるということ。これで満足するのはB1人です。

 このような事例だけでなく,選挙制度(年齢別選挙区のご提案には思わず拍手しそうになりました。超簡単に言って若者世代は投票の機会費用が高いため棄権が多く,中高年の機会費用は低いので投票に行く,投票の結果は中高年の意向をより多く反映したものとなる。そりゃイカンだろうということです。先生は都市と地方の投票行動や投票価値についても言及され,比例区より小選挙区が望ましいと強調もされています),政党,圧力団体,財政再建,問題先送り,不公平と非効率,地方分権,改革の方途などが取り上げられ,経済学というツールでいろいろな考え方が披露されています。経済学って本当に面白い。「こういう社会的装置を制度に組み込んでしまえばロビー活動のコストは小さくなる」などのご提案には,唸ってしまいます。


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